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2008年用ですが、部分的に内容を更新しています(2010/06/14)。
また、[建築農業工作ゼミ2009-2010]とも連動していますので、そちらにも幾つかサンプルがあります。
:

6/01/2008

センサについて

センサには、複雑なものもありますが、ArduinoのdigitalRead()analogRead()ですぐに使うことができるものも多くあります。いままで習った範囲でも制御できるセンサを挙げておきます。「四谷工作研究所(2007)」にも各種センサについて使い方を記載しているので参考にして下さい。
ツマミ回転式可変抵抗器:ツマミの回転量で出力値を変化
スライド式可変抵抗器:スライダの移動量で出力値を変化
ジョイスティック式可変抵抗器:スティックの動きで出力値を変化
圧電スピーカ:マイクとして使うことで衝撃音を計測
CDSセル(光センサ):光量を計測し出力値を変化
曲げセンサ:センサ自体を曲げることで出力値を変化
圧力センサ:押された圧力を計測
距離センサ:物体との距離を計測
加速度センサ:物体の重力方向に対する傾き角度/加速度を計測
人体感知センサ:人間の動きを感知しHIGH/LOWを出力


その他、スイッチ類を利用してセンサのように使うこともできます。


センサやスイッチ類をそのまま単体で使うだけでは、すぐには面白い表現にたどりつかないかもしれないので、複数のセンサやスイッチを組み合わせることを考えてみてください。例えば、単純なタクトスイッチを「Wooden Stick」に多数配置すれば、棒を握った箇所を判別するセンサになるように、応用的な使い方や配置の仕方を試してみるといいでしょう。


センサとArduinoの接続について:
可変抵抗器のように段階的に出力が可能なセンサは、大抵5V線、GND線、出力線の3つの端子があり、以下のようにつなぎます。

距離センサGP2Y0A21YK」の場合、電源(5V)とグランド(0V)にそれぞれつなぎ、出力線となる端子をArduinoのアナログ入力(ANALOG IN)のピンにつなぎ、出力線からの値をanalogRead()を使って読み込みます(プログラムについては、「Arduino シリアル通信1」または「Arduino アナログ入出力」を参照)。距離センサGP2Y0A21YKからanalogRead()で読み取った値を距離に置き換えるには、距離=220000/(読取値*5-200)にするといいそうです。
以下は距離センサGP2Y0A21YKの読取り電圧と距離(cm)の関係のグラフです。


このように3線(3端子)あるセンサの場合はいいのですが、2線(2端子)しかない場合は、必要な抵抗をつなぎ以下のようになります。

CDSセル(光センサ)」や「曲げセンサ」などは、2線(2端子)のまま売られている場合が多いので、適宜抵抗を取付けて、分岐する3つ目の線をのばし(出力線)、アナログ入力のピンへつないで下さい。つまり、2線(2端子)を3線(3端子)にするということになります。この際必要となる抵抗は、「プルアップ抵抗」と呼ばれます(プラス側に取付けた抵抗)。例えば、「曲げセンサ」の場合、もともと10KΩ〜30KΩ程度の抵抗があるので、10KΩの抵抗をつなぐとちょうどいいでしょう。「CDSセル(光センサ)」の場合も、同様のつなぎ方をします。取付ける抵抗(上図の場合10KΩ)の目安は、センサ自体の抵抗値と同程度のものとなります。取付ける抵抗を変えれば、出力される電圧や出力幅も変わるので、幾つかの抵抗を試してみて、読み取る際に丁度いいものを選んでください(プログラムについては、「Arduino シリアル通信1」または「Arduino アナログ入出力」を参照)。

また、スイッチなども2端子しかついていないので、抵抗をつなぎ、分岐させた3つ目の線(出力線)を取付けて、デジタル入力ピンへつなぎます。

タクトスイッチ」(あるいは2端子しかないスイッチ類)の場合、抵抗はマイナス(GND)側にとりつけてあります。これを「プルダウン抵抗」といいます。スイッチを押すと5V、放すと0Vの状態になります。5V/0Vのスイッチなので、デジタル入力によって読み取ります。
以下は、タクトスイッチを押すと13番ピンのLEDが光るプログラムです。

void setup(){
//12番ピンをデジタル入力に設定
pinMode(12,INPUT);
//13番ピンをデジタル出力に設定
pinMode(13,OUTPUT);
}

void loop(){
 //デジタル入力(12番ピン)がHIGH(5V)なら
if(digitalRead(12)==HIGH){
//13番ピンをHIGH(5V)で出力
digitalWrite(13,HIGH);
}else{ //デジタル入力がLOW(0V)なら
//13番ピンをLOW(0V)で出力
digitalWrite(13,LOW);
}
}

プルダウン抵抗/プルアップ抵抗:
もし、タクトスイッチから抵抗を通してGND端子へ線を接続していなければ、スイッチを押したときだけ5Vが出力されてデジタル入力の12番ピンがHIGHとして読み取りますが、スイッチを押していない時は12番ピンがどこにも接続されていない状態になってしまい、12番ピンにおいて不安定な値が読み取られます。読み取り値が不安定な値にならないためにも、抵抗を通してGNDピンに接続しておく必要があります。そうすれば、スイッチを押していない時は、GNDピンから抵抗を通して0Vが出力され、12番ピンはLOWとして読み取ることができます。つまり、スイッチを押したときの状態(5V出力)だけでなく、押していない時の状態(0V)もきちんと定義しなければならないということになります。
また、抵抗をプラス(5V)側に取付けて線を分岐させれば、「プルアップ抵抗」となります。プルアップにした場合は、押すと0V、放すと5Vになります。スイッチを押さない時の状態、押した時の状態の設定に応じて使い分けます。


「Wooden Stick」:作品制作



これまでの授業/ブログにおける、ProcessingとArduinoの基本操作方法を用いて、「Wooden Stick」の制作を開始したいと思います。以下に「Wooden Stick」の概要を再度書いておきます。

身体の描写:
物質上に、アナログ表現とデジタル表現をコラージュする。

日常生活の中から身体動作/行為を選びとり、素材をキャンバスとして、その動作や行為に含まれる以下の内容を写し取る。(例:ドアを開けるときの手や指先の動き、階段をのぼる際の、足/脚の動き)

身体部分の形状(動作や行為につながる部位)
身体部分のサイズ(幅、厚み、高さ、間接間の長さなど)
身体部分の動き(角度、方向)



「Wooden Stick」:
二次元や三次元に対して、一次元としての棒状/線状のオブジェクトに身体動作に関する内容を投影する。
投影方法:描く、塗る、刻む、削る、また他の素材を貼る、取付けるなど

木棒に転写された身体動作の描写の一部をデジタル技術に置き換える、あるいは重ね合わせる。



尚、「Wooden Stick」の後は、「Fabric Square」というサブテーマで次の制作を行う予定です。「Wooden Stick」を「Fabric Square」と対比的に捉えてみるといいでしょう。

「Fabric Square」の概要:
一次元や三次元に対して、二次元としての平面状のオブジェクトに身体動作に関する内容を投影する。
素材の持つ特性(柔軟性、透過性、包容性など)と、電気的表現、機械的表現を重ね合わせる。


次回(6/7)は、主に「Wooden Stick」をベースとして、表現や技術について授業を行いたいと思います。6/14までに、各自「Wooden Stick」を制作して来て下さい。

Processing-Arduino シリアル通信4


【変更】以下はArduino1.0まで対応したプログラム内容です。
特にシリアル通信においては、Arduino2.0使用の際、バイト送信する場合、
Serial.print(value,BYTE);
のかわりに、
Serial.write(value);
を使用してください。


前回までは、Arduino基盤に接続したセンサなどからProcessingの画像を動かしていましたが、今回はその逆で、Processingで制作した画像からArduinoを制御したいと思います。前回同様合図用のデータを送り、確認し合いながら通信します。Processingでマウスで動かすことができるスライダをつくり、256段階の値をArduino側に送り、PWM出力を用いてLEDの明るさを調節できる内容とします。Processing側から操作するので、まずProcessing側のプログラムから書きます。

Processingのプログラム:
//シリアルライブラリの取り込み
import processing.serial.*;
Serial port;

//X座標の変数
int x=0;

void setup(){
  size(255,100);
  //シリアルポートの設定
  port=new Serial(this,"/dev/tty.usbserial-A4001Kjl",9600);
}

void draw(){
  background(100);
  line(x,0,x,height);
}

void serialEvent(Serial p){
  //データ数が0個より多いとき
  if(port.available()>0){
    //X座標を送信
    port.write(x);
    //Arduinoからの合図用データを
    //読み込んでバッファを空にする
    port.read();
  }
}

void mouseDragged(){
  //ドラッグ中のX座標にマウスX座標を
  //最小値0,最大値255で入れる
  x=constrain(mouseX,0,255);
}

void keyPressed(){
  //sキーを押したら
  if(key=='s'){
    //通信開始用データ送信
    port.write(0);
  }
}


今回は、キーボードの「s」キーを押すことでシリアル通信を開始することにしました。「s」キーを押さなければ、Processing、Arduinoの両方のプログラムは、どちらも待機中となります。そのため、Processing側から「s」キーを押して、通信開始のきっかけとなるデータを1個(1バイト分)送ります。
Arduino側では、11番ピン(PWMピン)にLEDのプラス側を、GNDにマイナス側をつなぎます。必要に応じてその間に抵抗(220Ω)を直列つなぎします。

Arduinoのプログラム:
//読み取り値の変数
int val=0;

void setup(){
  //シリアル通信開始
  Serial.begin(9600);
}

void loop(){
  //データが0個より多いときの時
  if(Serial.available()>0){
    //データの読み込み
    val=Serial.read();
    //合図用データ送信(1バイト)
    Serial.write(65);
  }
  //アナログ出力(11番ピン)に読み込み値を入れる
  analogWrite(11,val);
}

手順としては、
(1)両方のプログラムが開始される。
(2)合図用データの待機中。
(3)Processingから「s」キーで通信開始用データを送信。
(4)Arduinoのバッファ内データを数える。
(5)Arduinoバッファ内データが1個以上ならデータ読み込み。
(6)その結果、Arduinoバッファ内データが空になる。
(7)Arduinoから合図用データ送信。
(8)Proccessingバッファ内データを数える。
(9)Processingバッファ内データが1個以上ならX座標データ送信。
(10)合図用データを読み込み、バッファを空にする。
 *以後は、(4)へ戻り通信を繰り返す。

追記:
上記プログラムで通信が途切れてしまう場合、ArduinoよりProcessingの処理速度が速すぎるのかもしれません。Processingのvoid setup(){...}内でframeRate(30)程度にするか、draw(){...}内にdelay(20)程度を挿入し少しスピードダウンすると安定するかもしれません。
あるいは、ProcessingからArduinoへ一方向的にデータを送る内容なので非同期通信にしてもいいかもしれません。その場合もProcessingのvoid setup(){...}内でframeRate(30)程度にスピードダウンし、void draw(){...}内にport.write(x)を入れて(serialEvent()は使わず)30fpsで定期的に送信し、Arduino側でそのデータを受け取るようにします(合図用データは送る必要はありません)。


関連:
Arduino-Processing シリアル通信1」(一つの値を送る/非同期通信)
Arduino-Processing シリアル通信2」(複数の値をバイトで送る/同期通信)
Arduino-Processing シリアル通信3」(大きな値を複数送る)
Arduino-Processing シリアル通信5」(複数の値を文字列で送信する)
Arduino-Processing シリアル通信6」 (2台のArduinoとProcessingを通信させる)

5/28/2008

Arduino-Processing シリアル通信3


【変更】以下はArduino1.0まで対応したプログラム内容です。
特にシリアル通信においては、Arduino2.0使用の際、バイト送信する場合、
Serial.print(value,BYTE);
のかわりに、
Serial.write(value);
を使用してください。


前回までのサンプルでは、ArduinoのSerial.write()を用いて、0〜255までの256段階の値を扱っていました。analogRead()からは、0〜1023までの1024段階の値を読み取ることができるのに、わざわざ4で割って256段階にスケーリングして解像度を落としていました。
今回はanalogRead()から読み取った1024段階の値を解像度を落とさずProcessingへ送信したいと思います。1024段階の値を二つの値に分解して送信する方法を用いることにします。大きな画面上で図形などを滑らかに動かすときや、センサなどから読み取った値を精度高く計算したいときは、解像度を低くできない場合があります。そのような時に、今回の方法を用いるといいでしょう。
今回もまた3個の可変抵抗器を基盤につなぎ(配線については前回ブログ参照)、それぞれをanalogRead()で1024段階で読み取り、Processing上でも1024段階で表現したいと思います。

Arduinoのプログラム:
//3つの変数を用意
int x, y, z;

void setup(){
  //シリアル通信開始
  Serial.begin(9600);
}

void loop(){
  //x,y,zの変数へ読み込んだ値を入れる
  x = analogRead(0);
  y = analogRead(1);
  z = analogRead(2);

  //Processingからの合図用データが
  //バッファ領域内に一つ以上になったら
  if(Serial.available() > 0){
    //それぞれの値を2つの値に
    //分解するための変数を用意し
    //計算結果を入れる
    int x_high = x / 256;
    int x_low = x % 256;
    int y_high = y / 256;
    int y_low = y % 256;
    int z_high = z / 256;
    int z_low= z % 256;
    //分解した値を送る
    Serial.write(x_high);
    Serial.write(x_low);
    Serial.write(y_high);
    Serial.write(y_low);
    Serial.write(z_high);
    Serial.write(z_low);
    
    //合図用データを読み込んで、
    //バッファ領域を空にする
    Serial.read(); 
  }
}

以上のプログラムで、x,y,zは整数型の変数です。整数型の計算では、例えば10/3=3、3/10=0であり、小数点以下の部分は無視されます(四捨五入もされません)。ちなみに、小数点まで求める場合は、float型の変数を用います。
それから「%」(Modulo)という割り算の余りを求める計算式があります。10%3=1、3/10=3、10%4=2、10%5=0となります。
今回はこの二つの計算方法を使って、0〜1023の1024段階の値をx_highとx_lowという二つの値に分解して、二つのデータとしてArduinoから送ります。送られたデータはProcessing上で再び合成されて、一つの値として扱われるようにします。
例えばArduinoのanalogRead()から950という読み取り値があったら、
x_high = 950 / 256;
x_low = 950 % 256;

として、
x_high = 3;
x_low = 182;

となります。
この二つの値3と182をそれぞれProcessingへ送信し、Processing上で、
x_high * 256 + x_low = 950

つまり、
3 * 256 + 182 = 950

と計算し直して、もとの値950を得ることになります。実は、分解された値は前回同様最大値が255(256段階)であり、大きな値に対して256が幾つ分あり、そしてその余りが幾つかということを計算して送信しています。
同様にyとzについても分解して送信し、Processing上で合成します。
今回は3つの値があり、それぞれを二つに分解して送信するので、合計6回送信します。

Processingの方では、円のXY座標と大きさをそれぞれ調節可能にするプログラムとします。解像度が1024段階あるので、画面サイズは大きめにしておきます。前回同様、マウスで画面をクリックしたら、通信開始するプログラムにします。

Processingのプログラム:
//シリアルライブラリを取り込む
import processing.serial.*;

Serial myPort;
int x,y,z;

void setup(){
  //大きめの画面サイズに設定
  size(1000,700);
  //滑らかな描画にする
  smooth();
  //シリアルポート設定
  myPort=new Serial(this,"/dev/tty.usbserial-A4001Kjl",9600);
  //バッファ領域を空にしておく
  myPort.clear();
  //図形の塗りを200に設定
  fill(200);
}

void draw(){
  //背景を白に設定
  background(255);
  //円の描画
  //XY座標と幅、高さに変数を入れる
  ellipse(x,y,z,z);
}

void serialEvent(Serial p) {
  //バッファ領域に6個のデータがあるとき
  if(myPort.available()>5){
    //分解された値を読み込む変数を用意し
    //各変数に読み込み値を入れる
    int x_high = myPort.read();
    int x_low = myPort.read();
    int y_high = myPort.read();
    int y_low = myPort.read();
    int z_high = myPort.read();
    int z_low = myPort.read();
    
    //読み込んだ値をそれぞれ合成し、
    //1024段階の値としてx,y,zに代入
    x = x_high * 256 + x_low;
    y = y_high * 256 + y_low;
    z = z_high * 256 + z_low;
    
    //合図用のデータを送る
    myPort.write(65);
  } 
}

//マウスが押されたら通信開始
void mousePressed(){
  myPort.write(65);
}

0〜255というのは、1バイト分のデータであり、二進数の
00000000〜11111111

の値ということになります。00000000は0であり、11111111は255です。0か1が8桁あり8ビット(=1バイト)となります。
16ビットなら16桁あり
0000000000000000〜1111111111111111

となり、0〜65535となります。16ビットなので2バイトあります。
今回値を二つに分けて送信した方法というのは、16ビットを
00000000|00000000

というように上位8桁と下位8桁に分けて送信したことと同じです。
もし、256という値なら、
00000001|00000000

となり、上位8桁だけをみれば00000001なので、8ビットの1と等しいことになります。下位8桁は00000000なので、8ビットの0になります。つまり、256の場合は、1(上位)と0(下位)が送信されるということになります。
950を16ビットの二進数であらわすと、
0000001110110110

であり、同様に上位8ビット、下位8ビットで分けると、
00000011|10110110

になり、
上位8ビット00000011は10進数の3であり、下位10110110は182になり、3と182を送信することになります。
ArduinoやProcessingにも二進数/ビット演算の数式や関数があります。
>>」という記号を用いて、
950 >> 8

と書けば、この値は3となります。つまり、950/256=3と同じ結果が得られます。
>>」というのは「右にシフトする」という意味で、「950 >> 8」においては「950を8桁右にシフトする」ということになります。二進数で言えば、
0000001110110110

という16桁を8桁右にずらす(シフト)ので、
0000000000000011

となり、十進数の3になります。
950 >> 1

なら、1桁右にずらすので、
0000000111011011

となります。ずらされて右端からあふれてしまった0や1は消えてしまいます。
そのほか「&」というのもあります。
950 & 255

と書けば、
182となり、950 % 256と同じ結果が得られます。以下のようにそれぞれを上下に重ね合わせて、950を255でマスキングするような感じです(ビットマスク)。
00000011|10110110  950
00000000|11111111  255
00000000|10110110  182

255の0のある桁(上位8桁)の真上の950の桁00000011はすべて消されて0となり、255の1のある桁(下位8桁)の真上の950の桁10110110だけ残ります。255は16桁のうち上位8桁はすべて0が並んでおり、下位8桁はすべて1が並んでいるので、255というマスキングを950に施すということは、950の上位8桁を消して(0にする)、下位8桁だけを取り出すということになります。つまり、
950 >> 8 = 3
950 & 255 = 182

という計算でも、950/256=3、950%256=182と同じ値が得られるということになるので、Arduino上のxの値に関しては、
x = analogRead(0);
byte mask = B11111111;
Serial.write(x >> 8);
Serial.write(x & mask);

と書くことができます。「byte mask = B11111111」というのは、maskというバイト型の変数を用意し、その値が11111111であるということで、xの値の下位8桁だけを取り出すために使っています。Arduinoにおいてバイトの場合は、8桁の二進数の頭の部分に「B」(二進数/バイナリーのフォーマット)を付けます。Processing上では、
(3 << 8) + 182 = 950

というように、逆に「3を左に8桁シフト」してから「182を足す」と「950」になるので、Processingでは、
x = (x_high << 8) + x_low;

と書けば同じ値を得ることができます。

二進数の表記やビット演算はサンプルプログラムやデータシートの中にも出てくることがあります。ビットやバイトを使わなくてもプログラムできますが、覚えておくと便利なときもあり、考え方や計算もよりシンプルになる場合があります。


関連:
Arduino-Processing シリアル通信1」(一つの値を送る/非同期通信)
Arduino-Processing シリアル通信2」(複数の値をバイトで送る/同期通信)
Processing-Arduino シリアル通信4」(ProcessingからArduinoを制御する)
Arduino-Processing シリアル通信5」(複数の値を文字列で送信する)
Arduino-Processing シリアル通信6」(2台のArduinoとProcessingを通信させる)

5/27/2008

Arduino-Processing シリアル通信2


【変更】以下はArduino1.0まで対応したプログラム内容です。
特にシリアル通信においては、Arduino2.0使用の際、バイト送信する場合、
Serial.print(value,BYTE);
のかわりに、
Serial.write(value);
を使用してください。


前回のシリアル通信では、ひとつの値をArduinoからProcessingへ一方的に送り続ける内容でした。今回は、Arduino側から三つの可変抵抗器を使って、三つの異なる値をProcessingへ送りたいと思います。

例えば、Processing上の3DモデルのX座標、Y座標、Z座標の値を送り、それぞれのツマミで三次元的に立体を動かすことができるプログラムになるということです。
Arduinoから3つの値を送るには、
Serial.write(x);
Serial.write(y);
Serial.write(z);

となります。
3つの値がXYZの順番で送られる場合、XYZ XYZ XYZ・・・と繰り返されますが、Processing側の読み取りを開始するタイミングがずれると、最初の幾つかの値をスキップしてしまい、YZX YZX YZX・・・、あるいはZXY ZXY ZXY・・・となってしまいます。このように、順番がずれないようにするためには通信上の工夫が必要となります。今回の方法では、3つの値を一方的に送るのではなく、受取確認をしながらお互いに通信します。以下にプログラムを書きます。

Arduino側のプログラム:
//x,y,zの3つの変数を用意し、初期値を0とする
int x=0;
int y=0;
int z=0;

void setup(){
  //シリアル通信開始
  Serial.begin(9600);
}

void loop(){
  //アナログ入力ピン0,1,2を
  //それぞれx,y,zに対応させる
  //値を4で割って最大値255にする
  x=analogRead(0)/4;
  y=analogRead(1)/4;
  z=analogRead(2)/4;

  //Processingから合図のデータが
  //一つ送られてきたらという条件
  if(Serial.available()>0){
    //x,y,zの順番で値を送る
    Serial.write(x);
    Serial.write(y);
    Serial.write(z);
    //先ほどのProcessingからの
    //合図のデータを読み込む
    Serial.read();
  }
}

Arduinoプログラム上のSerial.available()は、外部(この場合Processing)から1バイト分のデータが何個送られてきているかを数えてくれます。送られてくるデータは、Arduinoであれ、Processingであれ、それぞれのメモリ上(バッファ領域)に一旦貯められます。その後、Serial.read()によって、貯められているデータから順番にひとつずつ読み込む処理をします。もし、読み込む処理をしなければ、送られたデータは次々とバッファ領域に溜まり続けます(設定した限界をこえるとそれ以上貯めることはできなくなります)。if(Serial.available()>0){...}という条件は、データが1個以上貯まったら(0個より多い場合)、{...}内の処理をするという意味です。

このプログラムの場合の手順は以下のようになります。

(1)まず、Processingから合図用のデータが送られてくる。
(2)合図用のデータが、一旦Arduinoのバッファ領域に貯められる。
(3)Serial.available()で、現在何個データが貯まっているか数える。
(4)合図用のデータが1個以上あれば、(5)以下を実行する。
(5)Serial.write(x)で、新たなxの値を送信する。
(6)Serial.write(y)で、新たなyの値を送信する。
(7)Serial.write(z)で、新たなzの値を送信する。
(8)Serial.read()で、バッファ領域内の合図用のデータを読み込む。
(9)結果、バッファ領域が空になる(データの個数が0個になる)。
(10)Processingからの合図用のデータを待つ。

その後は(1)に戻り、同様の処理を繰り返します。要するに、Processingからの合図のデータが毎回1個送られて、それを確認後、Arduinoはx、y、zの値を送り返すという手順を踏みます。

次にProcessing側のプログラムを書きます。Arduinoのプログラムで書いたように、Processingからは、合図用のデータを1個送る必要があります。そうすれば、Arduinoから3個のデータが送られてくるので、Processingのバッファ領域にデータが3個貯まったときに、読み込む処理をさせればいいということになります。今回はx、y、zの3個の値なので3Dの図形を動かすプログラムにします。

Processing側のプログラム:
//シリアルライブラリを取り込む
import processing.serial.*;
//シリアルのオブジェクトmyPortを用意
Serial myPort;

//x,y,zの3個の変数を用意
int x=0;
int y=0;
int z=0;

void setup(){
  //3D用の画面サイズとして設定
  size(255,255,P3D);
  //シリアルポートの設定(「A4001Kjl」は基盤により異なる)
  //Windowsの場合は、"COM5"などとなる(前回ブログを参照)
  myPort=new Serial(this,"/dev/tty.usbserial-A4001Kjl",9600);
  //3D図形の塗りは無し(ワイヤーフレーム描画)
  noFill();
}

void draw(){
  //背景色を白に設定
  background(255);
  //3Dの位置座標にx,y,z入れる
  translate(x,y,z);
  //一辺50のボックス(立方体)を描画
  box(50);
}

//シリアル通信処理
void serialEvent(Serial p){
  //Arduinoから送られてきたデータが
  //3個(2より多い)の場合
  if(myPort.available()>2){
    //x,y,zの順番でデータを読み込む
    x=myPort.read();
    y=myPort.read();
    z=myPort.read();
    //読み込み後、合図データ送信
    myPort.write(65);
  }
}

//マウスが押されたら通信開始とする
void mousePressed(){
  //念のためバッファ領域を空にする
  myPort.clear();
  //とりあえず65という合図用データを送る
  myPort.write(65);
}

以上が、Processing側のプログラムです。3Dの場合は、size()の括弧内に画面幅、高さ以外に「P3D」を書き足します。ワイヤーフレームで描画した方が、今回の場合分かりやすいと思うので、noFill()をつかって塗り面を無しにしました。
void draw(){...}内のtranslate()は、その後に描画される3D図形の座標値をいれます。translate()に含まれる値が変化することで、3D図形は移動します。box()は、3Dの直方体を描画します。box(50,100,80)というように3つ値を入れれば、幅、高さ、奥行きをそれぞれ定義できます。box(50)の場合は、各辺が50の立方体になります。
シリアル通信の部分は、まずmousePressed()でマウスを押したときに、myPort.clear()でProcessingのバッファ領域内に貯まっているデータをとりあえず空にします(初期化)。そして通信を開始するきっかけとなる合図のデータをmyPort.write(65)で送ります。65という値を送っていますが、0〜255の値であれば何でも構いません。Arduino側は送られてくるデータの個数を数えるのであって、データの中身の値については、何でもいいことになります。つまり、合図用に何らかのデータを1個送ればいいということです。一旦合図用のデータがProcessingから送られれば、次にArduinoがそのデータを受取り、そして3個のデータを送り返してきます。void serialEvent(Serial p){...}内のif(myPort.available()>2){...}内では、Arduinoから送られて来たデータがProcessingのバッファ領域に3個貯まったら(2個より多くなったら)myPort.read()で3回読み込み、x,y,zの3個の変数にそれぞれ値を入れていき、それらのデータは、box()の3D座標になるtranslate()に代入され、box()が動きます。



もう一度、手順をはじめから書くと、

(1)Arduinoの電源がオンになり、Arduinoのプログラムが開始。
(2)Processingのプログラムを立ち上げる。
(3)Arduinoは、Processingからの合図用データを待つ。
(4)Processing側でマウスを押す(通信開始)。
(5)Processingのバッファ領域を一旦空にする(初期化)。
(6)Processingから合図用データが1個送られる。
 *以下、Arduino上での処理
(7)Arduinoのバッファ領域に合図用データが一旦貯められる。
(8)Arduinoのバッファ領域内のデータの個数を数える。
(9)データの個数が1個以上のとき、以下の処理を実行。
(10)Arduinoから、新たなxの値を送信する。
(11)Arduinoから、新たなyの値を送信する。
(12)Arduinoから、新たなzの値を送信する。
(13)バッファ領域内の合図用のデータを読み込む。
(14)読み込んだ結果、Arduinoのバッファ領域が空になる。
(15)次の合図用データがバッファ領域に貯まるまで待機。
 *以下、Processing上での処理
(16)Processingのバッファ領域にデータが貯められる。
(17)Processingのバッファ領域内のデータの個数を数える。
(18)データの個数が3個になったら、以下の処理を実行。
(19)xの値として1番目のデータを読み込む。
(20)yの値として2番目のデータを読み込む。
(21)zの値として3番目のデータを読み込む。
(22)その結果、Processingのバッファ領域が空になる。
(23)Processingから合図用データが1個送られる。
(24)次の3個のデータがバッファ領域に貯まるまで待機。
 *その後は(7)へ戻り処理を繰り返します。

Serial.available()
myPort.available()を使うことで、バッファ領域内に貯められているデータの個数を数え、その個数をもとにデータを送受信するタイミングを制御することができます。これ以外にも、送られる複数のデータの先頭部分や最後の部分に「.」(ピリオド)などの特定のデータを付け加えて送ることで、読み込み開始地点や読み込み終了地点を知らせる方法もあります。
シリアル通信を使うことで、コンピュータの内側と外側の世界をつなぐことができます。今後も様々な表現に応じて「シリアル通信」の技術は、繰り返し登場してきます。今回一気に理解できなくても、徐々に使いこなしていくことで、身についていくと思います。


関連:
Arduino-Processing シリアル通信1」(一つの値を送る/非同期通信)
Arduino-Processing シリアル通信3」(大きな値を複数送る)
Processing-Arduino シリアル通信4」(ProcessingからArduinoを制御する)
Arduino-Processing シリアル通信5」(複数の値を文字列で送信する)
Arduino-Processing シリアル通信6」 (2台のArduinoとProcessingを通信させる)


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